松岡正剛の千夜千冊『ボランティア』金子郁容

http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1125.html


金子さんが本書で一番たいせつにしたこと、
それは情報にはバルネラビリティがあるということだったのである。
バルネラビリティ(vulnerability)とは
「傷つきやすさ」「他からの攻撃をうけやすい状態」のことを意味している。
冒頭にも書いたように、ぼくはこれを「フラジリティ」ともよんでいる。
 
 ボランティアをしてみると、このバルネラビリティが不意にやってくる。
「よかれ」と決意してやったことなのに、へこたれそうになる。
それはまさしく個人を不意に襲うリスクであるのだが、
しかしとはいえ、そのように自分がバルネラブルになることは、
かつては体験も実感もできなかったことかもしれないのである。
 
 ここにはいったいどういうことがおこっているのだろうか。
矛盾がおこったのか。無理がおこったのか。
金子さんは本書の最後でこの問題の突破を試みる。
自分をバルネラブルな状態におくこと、
これは実は情報の動向の本質的な側面なのではないかと考えたのだ。