QueerJapanReturns vol.0 の感想など。(その2:特集「マッキー世代」)

 『槇原敬之の世代』ってタイトル、書き方がなんか余所行きっぽいです。
大体、日常会話では槇原敬之をフルネームで言うかしら*1
特集の文中でも「マッキー世代」という言葉が普通に使われているので、
以下特集タイトルは「マッキー世代」と言い換えます。
 
 けど、そういう私は、槇原敬之さんの曲ってほとんど知らない(本当)ので、
この特集で色々出てくる楽曲を見てもピンと来ませんでした。
しかし、この特集で「槇原敬之」をキーワードにするだけで
これだけ多くの人が様々な文書を作れるだけでも、
アーティストとしての槇原敬之さんの影響力が強かったことが
しっかりと見えてきます。ただし、インタビューを読む限りでは
その影響力はそこからリブなどのいわゆるラディカルな「運動」に
結びつくと言うより、むしろ個々の「生活」の充足の方向へ向かっていく
印象がありました。なにげにゲイである生活スタイルの肯定とか支援とか。
 
だからこそ、なにげにヘテロなノンケにも「マッキー」は支持されていて、
逆に濃いぃ固まりのような私には、マッキーは接点がないのかもしれません。
マッキーの歌詞とその当時の流行歌の比較年表とかが2Pあると面白かったかも。
こういう記事、ぜったい準備しているはずだけど、載っていないところをみると
JASRACへの歌詞掲載料をケチったのかなぁ。
 
 そうそう、ロングインタビューに出てきた二人、斎藤靖紀さんと
エスムラルダさんの二人に「キャンプ*2」なテイストを漂わせているのは
90年代からメディア露出しているゲイに共通する要素なのではないかと感じました。
逆に言うと、キャンプやオカマではない、なにげなゲイのほとんどには、
メディア的に*3はあまり居場所があまり無かったというか
…それは残念なことかも。
 この点で、ちょっとしたアンケートを(mixi経由で<ここ赤字でチェック。)
大量に集めた「マッキー世代の望む場所」や、伏見憲明さんが手がけた
桜丸さんのインタビュー「ある*430代サラリーマンとの対話」
のような記事は、今号のQueerJapanReturnsの中で白眉ともいえると思います。
こういった人たちのアンケートや良質なインタビューを集められるのは
伏見憲明さんの今までの仕事の積み重ねがあるからでしょう。
 
 「プレ・マッキー世代」の記事に関しては
…凄くわかりやすく、ライフコースのモデルを提示、誘導しています。
ある程度のお金も社会的責任&地位も持って居るんだから、
そろそろ「色々コミュニティのためにちょっとずつ動いてみてよ」という
伏見さんのメッセージというか、「誘惑」を強烈に感じました。
この世代のゲイには、世間的にはクローゼットなままの人も多く、
こういう甘い誘惑込みのメッセージはしばらくありすぎて損はないかと。
 
 
 そうそう、最後に一言。
斎藤靖紀さんのインタビューの中で


エスム:
初期の頃はオタク系だったのでほのぼの牧歌的な感じだったのが
ブルがクラブに行くようになって、随分変わりましたね。
 
斎藤:
オタク女がちょっと気取り始めたっていうやつ(笑)。
 
エスム:
ブルの中にパソコンネット・オタク・リブみたいなのか芽生えてきて。
「パソコン・オタク=ダサい」というイメージを変えたいという
気持ちがあったんだよね。
 
(中略)
 
斎藤:
ただ、あれは作為的だったかも。オタクを排除したかったかも。
それが93年か94年頃
(P.69)
 というのはかなり気になりました。
 クラブの熱狂空間でごちゃ混ぜに揉まれていく過程を経た後で
なぜ斎藤さんがオタクを排除する方向でUC-GALOPを構成したのか。
 
 ここでオタク的なノリも、おしゃれなノリも、
両方うまくmixして並列させたまま*5
パソコン通信のイメージをGUI主導でおしゃれに変えていれば、
その後のインターネットバブルの風に乗って
mixi的な面白いネットコミュニティ(ただし、よりゲイテイスト)」が
10年早く出来上がっていたかもしれません*6
冗談抜きで、斎藤さんはホリエモンとは行かなくても
そこそこの財を為していたかもしれません。
 
 なぜ、ここでオタクカルチャーを排除する方向に向かったのか*7
当時のノンケのパソコン通信カルチャー*8
今からするとドが付く濃いオタク文化と密接に結びついていただけに、
この辺りの展開については色々突っ込んで欲しいです、数年後ぐらいに。
 

*1:<オネェ出てきたw

*2:あるいはオカマ

*3:これ、ゲイのマスメディアだけでなく、メディア全体に言えることだ思います。新しい薔薇族なんかは、この文化的に尖った部分をウリにしてヘテロのニッチマーケットに売り出していこうとしているのではと推察。

*4:理想的な

*5:mixiには、何故かそれがある。

*6:ひょっとしたら、ゲイにmixiが爆発的に流行したのは、ゲイの方にmixiにfitする要素が色々あったのかも。例えば、ゲイバー独特のサロン的閉鎖空間への慣れが、mixi空間に近かったとか。この辺りビジネスモデル的に色々チェックしてみたいんで誰か教えてくださいおねがいします。

*7:この点では、もうひとつ気になることがあります。私が阪大に入るときにお世話になった人が、傍目にはどう考えてもかなりのオタクでゲイでありながら、当時の一般的なゲイカルチャーと旧来のオタクカルチャーの両面について、非常に強い嫌悪感を常日頃から晒していました、露悪的に。

*8:NiftyServeとかPC-VANとかASAHI-NETとか種々の草の根ネットコミニティとか色々。